今朝は村中 靄に包まれていた
ツィーッ。ツィーッ。と鳴く鳥が
早くも山から下りてきて 村のあちこちで鳴き交わしている。
島の朝も一面靄っていて
夜が明け始める透明な蒼い宙の下
靄の中から ひとり ひとり と あつまってくる
まだ 夜中やで。
少なくともみんな午前3時まではラジオをきいていたのだ
2時間も眠ってはいない
メンバがそろうと
とても臭う河口の岸壁を そ~っと 降りて
おんぼろカッターに乗り込むのだ。
軽くオールで岸壁を突いて
まるでこっそり 内緒のように
しばらくは 臭気たっぷりの川の水をひっかく
川を出ても そこは 小さな湾で
ずっしりと岸辺の靄は 張り出してきている
仲間の顔のほかは
みるく色のどこまでも柔らかな 千切れることなど決して無い靄だ
波の音
オールの音
靄の重み
先輩はこの牛乳みたいな視界のなかでどうやって
潮の色をみるのだ?
と
思いつつも
ひたすら 遅れないように
漕ぎ続ける
やがて 漕ぐ手を止めて
言われるままに 錨を降ろすと
そこはちゃんと 浅瀬なのだ
まるで魔法使いだ
誰も口をきかない
服が靄でぬれそぼってしまっているけれど
体が十分温まっていて
かえって心地よいのだ
とんびがはじめて鳴くと
東の山の上が 朱鷺色めいてくる
それが合図で 錨をあげる。 今度は
マーブルに 靄が流れるなかを
漕いでもどってゆくのだ
思い切り上体をそらして漕いでいると
眼前には 靄が
見る見る上空へ
柔らかな螺旋を描いてながされてゆく
岸壁がはっきり見える程明るくなると
沿岸を行く車のエンジン音も聞こえてきた
無言でカッターを係留して岸に上がると
一応礼儀だから敬礼なんかして
学校いって ねるかぁー が バイバイのかわりで
各自明るい川沿いの道を 学校へ。。。
楽しい夢の世界へと 登校するのでした。
昼食時は さすがに起きて たべていました。