その御宅は みはるかす湖を望む丘の上にありました。
夕食持ち寄り会のようなものにおよばれして
誰もが ゆうぐれの薄紅色をたのしみながら
ご馳走をたべておしゃべりしていました。
アキがはじまったばかりの夕暮れ時。
御宅の息子さんが突然立ち上がりお家のなかへ。
もどってこられた 両腕には でっかい冷凍コーンの袋。
湖への丘陵を足はやに下ります。
中腹あたりで すとん と止まり やおら
冷凍コーンを湖へ ばーーーーーと 蒔きました。
とおくから滑らかに野鴨が泳いできて
湖のこちら岸へあつまり 水面をついばみます。やがて野鴨たちは
この岸辺のどこか水草むらで眠ったようでした。
宇宙は うすべにいろ から 薄紫へ 濃い紫へ。
御宅の息子さんは再た あのベンチへもどられ気配を消して座っておられました。
今日は ハルの眩しい一日です。風もなく
ただ ただ明るい。 雲雀や ウグイスが鳴いています。
家のなかは うすくらくて 眩しさのなかに
いろんなことをおもいだします。
コーンポタジュを たべましょう。
冷凍コーンの。
季節を問わず 冷凍庫にあります、とおく離れたこの土地でも。
ぽってり仕上げる。たっぷり食べる。おもいだすことも 。枯れ草の匂いも、夕暮れの冷たさも。
たべよう。